ラトビア便り

ラトビア在住の日本人男性が、この国の文化を紹介。音楽情報などを通じてその魅力を探っていきます。

2006年10月29日

プーシキン通りの夜会

 忙しくとも、幸い土日祝日は休みである。
 金曜、今シーズン最初のプーシキン通りの夜会が開かれた。ラトビアにロシアの詩人プーシキンの名を冠した通りがあるのか、といぶかる向きもあろうが、リーガではトゥルゲーネフやゴーゴリとともに、中央駅裏手のいわゆる「モスクワ地区」にそれらは存在するのである。
 この夜会は、プーシキン通り1という素晴しい住所の年季の入った建物に、3部屋の大きなアパートを構えているゾルネロビッチ夫妻(ラトビア人)が、秋から春にかけておよそ月1回の割で、若手を中心とした詩の朗読やミニコンサートを開いているものである。広い部屋とはいえ、何十人もの人が集まるので、本当に足の踏み場もない。
 私はこういうイベントが好きである。こういうところを足がかりにして、文化が生まれていく、と思っているからだ。今回は約20分の寸劇がメインイベントで、その他にはギターの弾き語りコンサートやロシアの作家D.ハルムスの作品朗読も行なわれた。しかし全員がロシア語を解するわけではないので、ポカンとしている人もいた。私などはげらげら笑っていたらみんなに注目されてしまった。
 みんな思い思いにその場を楽しんでいる。台所で酒を飲みながら語らうのもよい。これだけ猥雑とした空間なのに、酔って暴れる人間もいなければ、モノが盗まれたこともないという。ゾルネロビッチ夫妻の人徳のなせる業だろうか。夜会なので泊まっていく人もいる。その辺に雑魚寝するのだ。私は今回も泊まってしまった。
 こういうところに集まる人々を見ていると、ラトビアの人々の休日の過ごし方は、なかなか優雅なものだと思ってしまう。