ラトビア便り

ラトビア在住の日本人男性が、この国の文化を紹介。音楽情報などを通じてその魅力を探っていきます。

2007年10月4日

ペレーツィス還暦コンサート(1)

 10月3日、リーガ中心部のラトビア協会にて、作曲家ペレーツィス教授の還暦記念コンサートが行われた。コンサート情報を調べたら、「入場料は寄付」と書いてあったが、行ってみるとこの協会に勤める知人が招待券をくれた。机の上に置かれたプログラムの脇には「プログラム代は寄付」と書いてあった。どっちなんだろうか。まあどっちでもいいや。
 出演者は有名なプロというより、音楽アカデミーの教官、学生たちなので、お客はそれ程多くなく、内輪の行事という雰囲気であったが、お祝いのコンサートなので、その知人(コンサートや音楽関係のイベントで、やたら司会進行をする人である)が最初だけ挨拶をし、女性の司会進行役にバトンタッチした。彼女は音楽情報センターに勤めているようだ。
 最初の曲はピアノソナタ、1988年の作品である。演奏したのは女性のピアニストで、音楽アカデミーの院生か教官ではないかと思う。続いて、「秋のプレリュードとフーガ」の初演。編成が変わっていて、バイオリン、フルート各1、サックス3(アルト、テノール、バリトン)である。バリトン・サックスを吹いていたのはオーストリア人で、どうやら音楽アカデミーに留学しているらしい。音楽の中心地、オーストリアからラトビアに勉強に来るとは、面白い。
 その次は、歌曲集「記憶の舟の中で」という、詩人A. スマガルスの7編の詩に曲をつけたもの。スマガルスという人は、ラトビアでもそれ程有名ではない。ラトビアの古い伝説などを元にしたロマンチックな内容の歌詞で、音楽もそれに良く合ったものであった。テノールはかなり若く、まだ学生のようだが、非常に上手であった。
 最後は、しばしば謎めいた曲名をつけるペレーツィスらしく、「壁の向こうの音楽」という。以前何かのインタビューで読んだことがあるが、新婚当時住んでいたアパートが安普請で、隣家の話し声などが聞こえてくるので、着想したのだという。そして、この曲が奥様に捧げられたものだということは、この日の演奏前の本人のトークで初めて知った。結婚40周年でもあるのである。それにしても、二十歳で結婚とは、早い。この曲も編成が変わっていて、バイオリン、ビオラ、チェロ、ファゴット各1である。初めはバロック音楽そのもので、弦楽三重奏で後からファゴットが登場する。これはビバルディの作品です、といったらみんな信じてしまうのではないだろうか。しかし2楽章辺りからペレーツィスらしい音楽になってくる。
 このコンサートは、ラトビア協会主催の室内楽シリーズの一環であった。ペレーツィスの管弦楽コンサートについては、またの機会に報告したい。