ラトビア便り

ラトビア在住の日本人男性が、この国の文化を紹介。音楽情報などを通じてその魅力を探っていきます。

2007年7月9日

花嫁祝福パーティー

 知人のL嬢と、ずいぶん久しぶりに連絡を取り合った。彼女の女友達が結婚するので、披露宴とは別に女友達だけで集まる(ラトビア人にはそういう習慣がある)から、ちょっと「出演」してほしい、というのである。L嬢が考えたのは、折鶴を折る実演をするというものだ。我々海外にいる日本人の多くは、折り紙は外国で受けるものとしてしばしば披露した経験がある。知らない人の結婚なんて、とは思ったが、なんとなく楽しそうかもしれないと引き受けた。
 先週土曜日、午後8時15分に、中心部の「ライマの時計」(ライマは当地のチョコレート菓子メーカーで、その時計塔が有名な待ち合わせ場所になっている)で待ち合わせることになった。その2時間ほど前、L嬢から電話があり、「花嫁に白いバラをプレゼントするといいと思うの。用意して待ってて」やれやれ、日本男児はこういうのが苦手である。仕方がないので近くで白いバラを買い(言われたとおりのことしかできない…)、所在無げに待っていた。外国人の男が独りで、花を持って人の多い週末の中心部で立っているというのは、なんとも気恥ずかしいものである。
 ちょうど8時15分、派手な塗装のバスが止まった。結婚式のイベントなどで、普通の自動車に思い思いの塗装(というか落書き)をしたのをたまに見かけるので、その手の車か、それにしても、タネ車は普通の路線バスとしか思えない。最初人ごとのように思っていたが、これがもしや、といやな予感がした。すると運転席脇のドアが開き、L嬢が下りてきた。「さあ、乗って!」恥ずかしさのピークである。乗ってみると、内装は派手に改造してあるが、どう見ても路線バスである。前方にはテーブルが据え付けてあり、奥にパーティードレスを着た華やかな女性たちが10人ほどいて、シャンペンなどを飲み盛り上がっている。禁断の花園に足を踏み入れた気分だ。
 日本人の珍客を乗せたバスは再び走り出した。そして一番奥にいた花嫁を紹介された。ものすごい美人である。私は白いバラを彼女に渡した。拍手と黄色い声の嵐。しかし残念ながら、彼女は私と結婚するわけではない。L嬢は鶴の折り方を知っているが、花嫁は知らないので、私が教えて一緒に折り、皆に見せるということになった。その後、L嬢が既に折って準備していたたくさんの鶴を、天井の換気用窓を開けて外に放り投げていた。花嫁が、皆の幸せを(ついでの私の幸せも)祈りながら、である。公衆の迷惑にならないかと思うが、結婚のイベントだと大目に見てもらえるのだろうか。
 私の短時間のパフォーマンス(というほどのものではないが)はなんだか訳のわからないまま終了し、リーガ西方のユールマラという海岸リゾートにある、駅の前で降ろされた。お祝い事ということで、「これ、足代ね」と、謝礼をもらってしまった。何もしていないのに、いいのだろうか。ここから電車で戻ればリーガ中央駅まで30分くらいである。でも、ここにはちょっと知っている場所があるので立ち寄ってみた。
 「民話の家ウンディーネ」である。木造のメルヘンチックな建物に、民芸品のようなものが所狭しと飾ってある。庭も同様で、毎週ではないが週末によくイベントをやっている。そのちょっと怪しげな雰囲気に、知らない人が見たら新興宗教団体の施設かと思うだろうが、そうではない(多分)。エコ・ツーリズムに取り組んでいるらしく、EUから補助金などももらっているらしい(違うかも)。運営もさまざまな人がかかわっており、緩やかに連携しているようだ。この日は特にイベントなどはないようだったので、海辺を散歩してから電車でリーガに戻った。また何かあったらこの施設のことを取り上げるかもしれない。