ラトビア便り

ラトビア在住の日本人男性が、この国の文化を紹介。音楽情報などを通じてその魅力を探っていきます。

2007年10月14日

民謡コンサート

 10月4日、ラトビア民謡を歌う女性ばかりのグループ「サウツェーヤス」がCDを出したのでその記念コンサートに行ってきた。会場は旧市街の英国国教会で、宗教上のつながりはないはずだが、由緒ある建物でしばしばコンサートに利用されている。
 「サウツェーヤス」とは、「呼ぶ者たち」というような意味で、女性複数形である。私もちょっとかかわりを持っている大学で4年前に結成された。さまざまな地方の歌を歌うので、わかりにくい方言の歌もある。CD発売記念コンサートということで、入場無料、CDも店より安く売っていた。これでやっていけるのか、いつも不思議なのだが、関係者はほかに仕事を持っているのだろう。CDを出したのは私の知人で、国や自治体、企業のスポンサーからお金をもらってこういう企画をするのを仕事にしている。
 ラトビアの合唱音楽は日本にも徐々に知られてきているが、このグループはもっと原形に近いというか、少人数で、声を張り上げる野趣あふれるとでもいおうか、そんな歌い方をする。こういうのも魅力的だが、ドイツなどのクラシック音楽の影響で発展した合唱を聞き慣れた耳には、違和感があるかもしれない。
 初のCDリリースということで、会場にはスクリーンを設置してスライドを上映し、多くの人が花束を手にするなどお祝いムードであった。終了後、リーダー(?)がゆかりのある人々の名を挙げ、前に呼んでいたが、グループの母体である大学の学長は呼ばれたものの会場にいなかった。「じゃあ、ほかの大学関係者の方」誰も名乗り出なかった。
 会場にはセルゲイ・アリョンキンというロシア人学校の先生も来ていた。彼は生徒たちとともに、ロシアやベラルーシの民謡を歌うなど、フォークロアの活動に熱心である。何でもロシアのオムスクでフォークロア・フェスティバルがあり、その支度をしているところだという。列車でモスクワまで行き、さらに列車を乗り換えて2泊かかるそうだ。長旅である。彼もゆかりのある人なので、前に呼ばれていた。
 コンサートが終わると、お祝いということで軽食や飲み物(アルコールも)が出され、おしゃべりを楽しんだ。リーダーの女性は私に「さっき、あんたのこと呼んだのに」ああそうだったのか。いや、そういう気もしたが、私の名が呼ばれたのではないので、しゃしゃり出るのも気がひけたのである。
 アリョンキン氏はラトビア語もできるので、みんなとの会話はラトビア語になったり、ロシア語になったりと、和気藹々であった。私のラトビア人の友人は、私がロシア語ができるかどうか知らないので、こういう機会に私がロシア語を話すと、驚いたり、なぜか喜んだりする。ラトビア人はかたくなに、ロシア語を話すのを拒否すると思われているが、個人差があり、またケースバイケースである。アリョンキン氏はフォークロア活動をする仲間だから、受け入れられているのだ。こういうことは外国人にはなかなか飲み込めない。私も最初は戸惑った。今はもうだいぶ慣れたが、それでも時々ちょっとした違和感を覚えることがある。