ラトビア便り

ラトビア在住の日本人男性が、この国の文化を紹介。音楽情報などを通じてその魅力を探っていきます。

2007年6月13日

ラトビア音楽コンサート

 国内の楽譜出版社、ムシカ・バルティカが月曜日、楽譜のプレゼンテーションを兼ねて無料コンサートを開いたので、音楽アカデミー2階のホールに行ってきた。
 プログラムは、今年きりの良い年を迎えるラトビアの作曲家たち、エーリクス・エッシェンワルツと女性の若手のホープ、グンデガ・シュミッテ(二人とも30歳)、機会があれば日本に紹介したいと思っているアルトゥルス・マスカツ(50歳)、そして還暦を迎える、ペーテリス・プラキディスと我らがゲオルクス・ペレーツィスの作品で、曲順もこの通りであった。なお、各々の誕生日は分からないので、年齢は正確ではない。あしからず。客席にはこれら作曲家の他、昨年還暦を迎えたペーテリス・バスクス、音楽学者など関係者も多数来ていた。なぜか全ての席が「予約席」となっていたが、かまわず空いている席に座った。
 前半はエッシェンワルツの作品、ギターと弦楽のための「沈黙の歌」に始まり、その後シュミッテの男声5重唱のための「Grasshopper」、マスカツの「5つの子供の詩」が演奏された。「沈黙の歌」は既に円熟の域に達しているといっても良い、若き巨匠の風格を感じさせる傑作。演奏は弦楽器の音色がところどころ貧弱な感じがしたが、ドイツから呼んだギタリストのソロは良かった。シュミッテの作品は、正直に告白するが、うとうとしてしまったので、ちゃんと書けない。ごめんなさい。男声2重唱の客席から向かって左から2番目の男が、トークをした。でも受けるかどうか自信がなく、すぐやめてしまった(結構面白かったが)。マスカツの作品も男声5重唱のためのもので、シュミッテの作品ともども、このグループ「コスモス」のために書き下ろされた作品のようである。マスカツの方は、ヒューヒュー、シューシュー、擬音を使ったり、楽譜を丸めて口につけて歌ったり、面白いのだがことさら子供っぽくしすぎではないのかとも思った。
 休憩が20分もあり、下に下りてみるとワインが振舞われていたので、ペレーツィス氏らとおしゃべりをした。楽譜は開演時からずっと並べられてはいるが、妙なことにただ置いてあるだけでその場で買えないのである。こちらではこういうことは時々ある。
 後半、プラキディスの作品は、当初チェロ独奏と弦楽のための「ロッシーニのパスティーシュ」の予定であったが、チェリストに健康上の問題があるとかで別の室内楽曲に変更になった。これも良かったが、皆残念がっていた。私もその「パスティーシュ」は昨年11月、独立記念日のコンサートともう一度、別のところで聴いたことがあるが、面白かった。
 そして、トリをつとめたのが、ペレーツィスの「Revelation」(啓示)である。これはカウンターテナー、弦楽、ピアノ、トランペット独奏という、ちょっと変わった編成だが、そこはペレーツィスの魔術、聴いているうちにすぐ違和感など感じなくなってしまう。私はこの曲も「パスティーシュ」同様、昨年11月の独立記念日コンサートで聴いたが、やはりトリで随分盛り上がったのを覚えている。今回、カウンターテナーの歌手が登場したとき、思い出した。前半、トークまでこなした長身の男(左から2番目)が「啓示」ではソロを務めたが、昨年11月の時も彼がソロだった。
 プログラムは作曲家の年齢順とはいえ、「啓示」を最後に持ってきたのは正解で、今回も大変盛り上がった。前半の若手たちも、すでにスタイルを確立した名手である。それにしても、楽譜会社の宣伝のために、こんなコンサートを無料で開いてしまうのだから、すばらしい。これだからこの国の音楽事情、目が離せない。