ラトビア便り

ラトビア在住の日本人男性が、この国の文化を紹介。音楽情報などを通じてその魅力を探っていきます。

2007年10月20日

ペレーツィス還暦コンサート(2)

 10月は作曲家ペレーツィス氏の60歳を祝うコンサートが二つあった。一つ目はすでにお伝えしたが、二つ目は18日(木)にあったので、報告しようと思う。場所はペレーツィス氏が教授を務める、音楽アカデミーである。
 前日の新聞に大きく取り上げられ、そこには19時30分開演と書いてあり、またインターネットのイベント情報サイトにもそう書いてあったので、19持少し過ぎに行ってみたら、なんともう始まっていた。こういうことは前にも1,2度あるが、ひどい話である。しかもプログラムがもう売り切れていた。最初の曲が終わるまで入れてもらえず、20分ごろ1曲目が終わり、ようやく入ることができた。遅刻する人が大勢いるかと思ったら、私のほかには夫婦と思われる中年の男女二人だけで、彼らはペレーツィス氏の親戚の方々であった。コンサートに遅れるのは私はとても嫌で、遅れそうなときには行かないこともある。しかしカリカリしていても仕方がない。ペレーツィスの音楽に癒されるためにやってきたのだから。
 席に着き、隣の人にプログラムを見せてもらう。今回の演目はなんと、すべて金管楽器の協奏曲である。そのことはだいぶ前に聞いていたような気がするが、その時は吹奏楽曲ばかりやるのだと誤解していた。いずれにせよ、知らない曲ばかりである。オーケストラは国立交響楽団で、独奏者は若手が大半だがラトビアのトップクラスの演奏者ばかりである。
 プログラムが手元にないので、1曲目が何だったかはわからない。2曲目はチューバ協奏曲である。正直なところ、あまり印象に残らない曲であった。次のトランペット協奏曲は、ペレーツィス独特ながらもわかりやすい節回しが随所に聴かれる佳作であった。続くトロンボーン協奏曲は、超絶技巧には聴こえないが技術的にはかなり難しく、演奏者泣かせではないかと思わせた。独奏を務めたのは若い男性で、上手なのだが何箇所か音程が飛ぶ所で苦戦していた。私には金管の演奏技術のことはよくわからないが、難しいと思われる。
 うろ覚えで演奏会評を書くのは難しい。同じ作曲家の作品ばかりということもあって、混同してしまう。上記のトロンボーン協奏曲と、そのあとのホルン協奏曲には、ピアノ組曲第4番(北條陽子さんが演奏した曲)や、白鍵協奏曲にも用いられた旋律が出てくる。何がどの曲で使われていたか、わからなくなってしまったが、知っているものには一種のなぞ解きの楽しみがある。
 最後は、トランペット、ホルン、トロンボーン、チューバのための協奏曲。壮観である。第1楽章の前半以降繰り返し出てくるリズムに、はたと聞き覚えがあった。ラトビアで人気のあるスポーツの一つにアイスホッケーがあるが、試合の日に街でファンの連中がブーブー鳴らしている笛(?)のリズムと同じなのである。ペレーツィスという人はテレビも見ず、新聞もあまり読まないという、浮世離れした生活をしているから、アイスホッケーにも関心がなさそうだが、街でたまたま鳴り物を聞いていて、そのリズムが耳にこびりついていたのかもしれない。それにしても、それを作品に用いてしまうなんて、他の作曲家はまずしないだろう。