世界の童話とペレーツィス
7月にペレーツィス氏と偶然中心部でお会いしたとき、8月に童話の朗読とピアノによる演奏会があるというお話をうかがった。しかもそれは、「童話を思い出しながら―ペレーツィスの音楽の中のラトビア、ロシア、ドイツ、デンマーク、そして東洋の童話の登場人物」と銘打ったもので、非常に興味をそそられた。
会場はわれわれにはおなじみのリーガ・ラトビア人協会。しかし、日時を後日新聞で確認したら8月10日で、ちょうど母がいるときだったので連れて行ったら、守衛さんが「今日は演奏会はありませんよ」というので外のチラシを見たら、1週間後の17日となっていた。新聞が日付を間違えて告知したのである。私は前にもそういう「被害」にあったことがあるが、それも同じ新聞で、しかもペレーツィス作品の演奏会であった。
気を取り直して17日、会場に足を運んでみると、今度はちゃんと演奏会の準備をしていた。ペレーツィス氏も来ていたので挨拶をした。本当のことを言えば、童話をモチーフにした(そもそも、今までに聴いたペレーツィス作品の中に標題音楽なんてあっただろうか、と考えてしまった)音楽なのだから、子供向けに書かれたのではないかと思ってしまったのである。しかし演奏が始まるとそれは間違いであることがすぐにわかった。ペレーツィスの音楽は、子供にもわかるし、大人にも十分堪能できるものであることが、このような作品からもうかがえたのである。
もうひとつは、童話を朗読しながら音楽を演奏するのではないかと思っていたのだが、そうではなかった。
語り手の女優がまず、ラトビア民話の概要について語り、それからピアノ連弾での演奏が始まる。連弾はビークスネという姓の男女のデュオ(姓が同じなので夫婦かもしれない)で、知らなかったが非常に優れた演奏であった。この作品ではまず、ラトビア民話の10の登場人物が題名となっている小品を、それぞれ語り手の女優が「次は~です」といった後に演奏したのだが、7曲目の「スプリーディーティス」(小人の探検の物語)は、結構長いお話を語った後で演奏した。
次はロシア民話である。やはり10の登場人物をモチーフとした小品集で、語り手はいくつかの曲の合間だけその民話を朗読した。
休憩を挟んで第2部は、グリム童話から始まった。1曲目は「赤頭巾ちゃん」だったが、これがペレーツィスの手にかかるとどんな音楽になるか、想像がつくだろうか。これが実に楽しい作品なのである。グリム童話も10の登場人物をモチーフにして語りとピアノ演奏が変わりばんこに行なわれた。
お次はは東洋の民話と題していて、ひょっとして中国や日本も含まれるのか、と思っていたが、これは全て「アリババと40人の盗賊」の7つのモチーフに沿って書かれた音楽なのであった。最初の曲で少しだけアラブっぽい音階(和声的短音階、っていうんでしたっけ)が使われたが、もう完全にペレーツィスの世界であった。最後がデンマーク、といえばもちろんアンデルセンとなるわけで、雪の女王をモチーフとした1曲であった。
1曲1曲は非常に短かったが、語りも入っていたので2時間以上かかった。非常に充実した内容とメリハリの利いたよい演奏であった。終演後、ペレーツィス氏に挨拶しに行ったら、あの冷静沈着なペレーツィス氏が、感極まって泣いていたのには少し驚いた。
この日はラトビア・ラジオが取材に来ていて、演奏会を録音していたので、放送される可能性もある。そうなれば日本でもインターネットで聴けるので、改めてご紹介したい。
3 Comments:
「ペレーツィス氏が、感極まって泣いていた」――其のトリガアは、何だったのでせうか。筆者様が親孝行だから?
「ペレーツィス氏が、感極まって泣いていた」――其のトリガアは、何だったのでせうか。筆者様が親孝行だから?
こんにちは。
先日、Viktors Bastiksというラトヴィアの作曲家のChristmas CantataのCDが12月10日に発売されることを知りました。
この作曲家の音楽はお聞きになったことはありますか?
CD買ってみようと思っていますが、ラトヴィアでの知名度、作風などの情報があれば、教えていただければ幸いです。
寒い季節になりますが、どうかご自愛ください。
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