ラトビア便り

ラトビア在住の日本人男性が、この国の文化を紹介。音楽情報などを通じてその魅力を探っていきます。

2007年4月19日

15番トロリーバス

 たまには、身近に起きた出来事でも書くことにしようか。
 私は週に何回か、夕方用事があって15番トロリーバスで中央駅の裏の、治安が悪いと言われる地区に出かける。しかも家路を急ぐ人々で大混雑である。スリなどに気を付けないといけない。
 余談だがトロリーバスというのは、架線から電気を取り入れて走るバスのことで、日本ではなじみがない。たしか、全国で1系統のみ、それも立山・黒部アルペンルートに、全線トンネル内を走るバス路線があり、排ガスを出さないため架線を引いてトロリーバスを走らせていると聞いたことがある。ここリーガでは20以上の系統があり、市民の重要な足となっている。
 先日、いつものように15番トロリーバスに乗り込んだ。おばあさんが乗ってきたので、席を譲り、少し右へ移動した。すると、その向かいに座っていた別のおばあさんが、「カバンをここに乗せなさい」といって、私のカバンを膝に乗せてくれたのである。
 こちらでは公共交通機関に乗っていると、人々の態度は概して素っ気ない。日本とどちらがマナーが良いか、比較は難しいが、日本よりやや悪い反面、それを注意する人も日本より多く見かけるような気がする。老人等に席を譲る人もいれば、譲らないで平気で座っている人もいて、日本とそう変わらない。
 だから、こんな親切な人がいるのに少々驚いた。私がそのときカバンにたくさん書類や資料を入れていて、その上リュックサックもしょっていたから、大変そうに見えたのだろうか。それでも滅多にあることではない。
 とはいえ、外国生活では「人を見たら泥棒と思え」である。ましてや15番トロリーバスである。そのおばあさんとは少しお喋りなどしつつも警戒していた。もっとも車内は混んでいて、さっとカバンをひっつかんで逃げることなど不可能なのだが。やがて目的地に着いたので、礼を言って降りた。もちろん、何も盗られていなかった。