ラトビア便り

ラトビア在住の日本人男性が、この国の文化を紹介。音楽情報などを通じてその魅力を探っていきます。

2010年1月19日

ユールマラ

 気がついたら年が明け、松の内もとっくに過ぎてしまった、という感じである。冬至から1か月たち、日もずいぶん長くなった。でもまだまだ寒い。
 先週末、郊外のユールマラというところへ遊びに行った。
 ユールマラは普通名詞なら「海辺」という意味で、それがそのまま地名になっている。市の名でもある。海浜リゾート地で、ソ連時代は要人の別荘が立ち並んでいたが、今も富裕層(ロシア人が比較的多い)が多く住むほか、ロシアからも大勢観光客が来ているようだ。
 この時期、寒中水泳をするのでもない限り、もちろん寒すぎて泳げない。ラトビア国内は今15年ぶりの寒さで、今週末、明け方は地域によって零下20度を下回り、30度近くに達するのではないかと言われているのである。
 ユールマラへは電車とバスが頻繁に出ている。久しぶりに電車に乗ってみた。昔、短期間だが、ユールマラの少し手前の小さな村に住んでいたことがある。その頃は、駅名すら表示してない駅が多く、車内放送も全くなかったので、初めてのときはどこで降りたらいいのか分からず他の乗客にきいたものだが、今では車内放送の録音が流れる。車内もきれいな座席になっている。変わったものだ。しかしリーガを離れ、車窓から見える沿線の風景はほとんど変わっていないように思える。川は全面凍結していて、氷に穴をあけて釣りをする人々でにぎわっている。
 30分ほどでユールマラ市内に入る。海にそって西に長く伸びているが、今回は遠くへは行かずズィンタリという駅で降りた。ここにはコンサートホールがあるが冬はあまり営業していない。ここはリゾート地なので夏が中心なのだ。
 一面白銀の世界である。リーガからしてそうなのだが、人もまばらで雪も踏みしめられた跡があまりない。と思って海の方へ歩いて行ったら、思いのほか人は多く、凍った海面の上を歩いている人が何十人もいたので私も歩いてみた。砂浜の上に雪が積もったところを更に歩いてゆくと、海面に行き当たる。後でニュースで聞いたが、リーガ湾の半分ぐらいが凍結していたということだ。ユールマラでは数十メートルぐらいだったので、他の海域ではもっと沖合まで凍っていたのだろう。沖の方を見ると、小さな氷の塊が浮いていてそこにカモメが何羽もやってきて、羽を休めていた。近くに宿をとったが、それなりのホテルでネット予約しておいたら1泊四千円ぐらい(朝食付き)だったから、閑散期の割引なのだろう。
 翌日帰るときには、駅の近くの高い木の梢に日が当たって、すっかり雪が解け、緑の葉をのぞかせていた。気温はまだ低いが、同時に春の近づいてくるのを感じさせるラトビアの1月である。

2010年1月8日

ペレーツィスを紹介する音楽エッセイ

(この投稿は、書き始めたのが8日なのでそのように表示されていますが、公開したのは2月初めですので、ご了承ください)
 東京でも雪が降ったと聞いたが、こちらでも大雪である。
 1月下旬には零下20度を下回り、内陸部では33度を記録したということだが、それ以降は暖かくなり、日曜(1月31日)以降、昼間は0度前後になっている。もう、氷に穴をあけて釣りをしたり、川を渡ったりするのは危険なのだが…まだ懲りずにやっている人がいる。中心部の公園に高さ3~4mの巨大な雪だるまが3体ほどあるが、これらはまだ健在だ。2月に入っての大雪で交通が混乱し、副市長がテレビで「3日以内に雪を片付ける」と宣言したが、本当にやってくれるのだろうか。
 2月はまた寒くなるという報道もあるので、覚悟せねばなるまい。

 さて、私は自分が日本にいたころに入手したCDを聴いて好きになった、ペレーツィスという作曲家を日本に紹介できないかと思い、微力ながら、さまざまな方の協力を得て実現してきた。関係者の皆様には改めて深く感謝する次第である。でも、日本で手に入るCDもあるのだし、情報化社会である。いろいろな機会を得てペレーツィスを「発見」して紹介している方々がおられる。このブログの趣旨から少しそれるが、それを少し紹介しよう。
 最近、玉木宏樹『クラシック埋蔵金』という本を手にする機会があった。軽い読み物で、普通に知られている作曲家の名前は、意図的に避けているのか、まず出てこない(ロベルト・シューマンぐらいか)。この本に、今好きな作曲家として、ペレーツィスが2度も登場する。
 一つは昨年北條さんが日本初演した『コンチェルティーノ・ビアンコ』、そしてクレーメルがソロを弾いている「友人との出会い」である。説明もなかなか良い。前者は、おなじCDにグレツキ(ポーランド)の作品があったので買い、ペレーツィスは知らなかったが、寝るときにCDをかけていてそちらの方が好きになったとのことである。私が「それにもかかわらず」を聴いてこの道(?)に入ったのと、まったく同じ経緯というのも面白い。
 書店でご覧になってみてはいかがであろうか。