ユールマラ
気がついたら年が明け、松の内もとっくに過ぎてしまった、という感じである。冬至から1か月たち、日もずいぶん長くなった。でもまだまだ寒い。
先週末、郊外のユールマラというところへ遊びに行った。
ユールマラは普通名詞なら「海辺」という意味で、それがそのまま地名になっている。市の名でもある。海浜リゾート地で、ソ連時代は要人の別荘が立ち並んでいたが、今も富裕層(ロシア人が比較的多い)が多く住むほか、ロシアからも大勢観光客が来ているようだ。
この時期、寒中水泳をするのでもない限り、もちろん寒すぎて泳げない。ラトビア国内は今15年ぶりの寒さで、今週末、明け方は地域によって零下20度を下回り、30度近くに達するのではないかと言われているのである。
ユールマラへは電車とバスが頻繁に出ている。久しぶりに電車に乗ってみた。昔、短期間だが、ユールマラの少し手前の小さな村に住んでいたことがある。その頃は、駅名すら表示してない駅が多く、車内放送も全くなかったので、初めてのときはどこで降りたらいいのか分からず他の乗客にきいたものだが、今では車内放送の録音が流れる。車内もきれいな座席になっている。変わったものだ。しかしリーガを離れ、車窓から見える沿線の風景はほとんど変わっていないように思える。川は全面凍結していて、氷に穴をあけて釣りをする人々でにぎわっている。
30分ほどでユールマラ市内に入る。海にそって西に長く伸びているが、今回は遠くへは行かずズィンタリという駅で降りた。ここにはコンサートホールがあるが冬はあまり営業していない。ここはリゾート地なので夏が中心なのだ。
一面白銀の世界である。リーガからしてそうなのだが、人もまばらで雪も踏みしめられた跡があまりない。と思って海の方へ歩いて行ったら、思いのほか人は多く、凍った海面の上を歩いている人が何十人もいたので私も歩いてみた。砂浜の上に雪が積もったところを更に歩いてゆくと、海面に行き当たる。後でニュースで聞いたが、リーガ湾の半分ぐらいが凍結していたということだ。ユールマラでは数十メートルぐらいだったので、他の海域ではもっと沖合まで凍っていたのだろう。沖の方を見ると、小さな氷の塊が浮いていてそこにカモメが何羽もやってきて、羽を休めていた。近くに宿をとったが、それなりのホテルでネット予約しておいたら1泊四千円ぐらい(朝食付き)だったから、閑散期の割引なのだろう。
翌日帰るときには、駅の近くの高い木の梢に日が当たって、すっかり雪が解け、緑の葉をのぞかせていた。気温はまだ低いが、同時に春の近づいてくるのを感じさせるラトビアの1月である。